調理師の就業先【全業種中3位】老人ホームの仕事の実態
調理師が働く職場で、最も多いのは飲食店です。
でも次に多いのは、「社会福祉施設」って知っていましたか?
このような施設は、ほとんどが外部業者と委託業務をして食事の用意をされています。
その中でも、介護保険施設(老人ホーム)に焦点をあてお話します。
依頼された施設の厨房を借りて料理を仕上げる流れの中、様々なトラブルが起こります。
管理側と現場のギャップが引き起こす不都合が多すぎる
施設の運営側は、朝、昼、晩 3度の食事の費用をなるべく安く抑えるため、仕入れ値の安い業者に委託します。
業者の方も契約をとるため、企業努力で安い献立プランでプレゼンするわけですが・・・
双方がギリギリのラインで攻めるため、少しのひずみだったはずが、現場では大きなひずみとなって現れてしまいます。
ギリギリの人件費で慢性的な人手不足 パート主体の現場
現場では管理調理師が一人、あとはパートさんが主体で動くスタイルです。
パートの方って、何かしらの事情で常勤に就けない方ですよね。
何かしらの事情で、急な欠勤も仕方ありません。
元々、ギリギリの人数構成が求められているので、抜けた人員を埋めるには、休日のパートの方にお願いするしかなく、シフトの調整を行う管理調理師は非常に苦労します。
さらに会社側からは、パートの管理が甘いと責められることもあり、精神面でも苦労が絶えません。
みなし残業代に釣り合わない時間外勤務
基本的に人員不足な環境のため、現場の管理調理師は残業を強いられます。
毎月、「みなし」の残業代をはるかに超える残業時間は当たり前。超過分はもちろんサービス残業です。
切実に人員拡張を訴えても、「その調整さえも行うのが現場管理者だ。」と会社は言ってくるでしょう。
結局、管理調理師が身を削り人員不足を補う
このサイクルがいつまでも続いています。
栄養士が不在でトラブルの対応が遅れることも
人件費節約のため、栄養士が現場にいない会社も少なくありません。
その為にメニューや食材等々、食事に関わる変更やトラブルが起きた際には、自己判断での対応が可能な部分が少なく、その度に本部へ連絡を入れ、それから更に栄養士へ話が伝わり、判断が下されると言う流れになります。
その場のアドリブが効かない事が多く、対応の遅れの責任により、理不尽な事で頭を下げる展開は多くあります。
以前と同じトラブルで対応内容がわかっている場合でも、事後報告は会社から反発をされるでしょう。
【高給!急募!】それでも新人パートが続かない
介護保険施設(老人ホーム)の調理補助は2000円という高額時給にもかかわらず、辞めてしまうパートさんが続出しています。
なぜでしょうか?
募集の内容でよくあるのは、「調理師の調理した料理を指示通りに盛付・配下膳・洗浄 等」とあります
が、現実はそればかりではありません。
歯が悪い、身体の不自由、認知症など個々に合わせた提供をしなければいけないため、100を裕に越えるレシピ、食札と呼ばれる個々の食事形態をメモした表記物の見方、ひとりひとりの食事形態の違い、メニューごとの仕込みの違い、覚えることは山のようにあります。
その上、労働量も多く、新人の離職率が高い原因となっています。
会社本部の考えは「管理調理師の対応不足」
そもそも、管理調理師の力不足だとしても、その人を雇用した会社の責任でもあります。
だけど、もともとの人件費がギリギリなため、ひとり1人の仕事のウエイトが重すぎるから続かない。
息つく間もない仕事量で、まともに覚えている暇もありません。
会社側は、高額時給なのだから、そのくらいは当然と考えているかもしれませんが、パートの立場からすれば、「嫌なら辞めるしかない」わけですから、続きませんよね。
それでも会社は、「パートさんの管理が甘い」と管理調理師を責め立ててきます。
管理調理師がタフな方であっても、精神的な責めが続くと長続きしません。
管理調理師の育成枠が生き残らない理由
多くの職場では、
管理調理師 1人
育成枠 1人
パート調理師 数名
パート調理補助 数名
このような配置が多いと思います。
育成枠の方は、早急にも他の現場に責任者としての独り立ちを目的として調理、仕込みのやり方を徹底して覚えさせます。
少しでも空いた時間は、発注やシフトの作り方、月末に向けての報告書の作り方を教わり業務終了前の掃除や洗い物、運搬等々はせずに事務室などに籠ります。
スタッフルームに籠もる事も多いので、端から見ると楽な仕事ばかりをしている様に見えてしまい、不満の声が上がってきます。
管理者候補がパソコン事務や、シフトの調整で悩んでいモタモタしていると、パートさん達の不満が増加。
業務中でも、パートさん達の圧(プレッシャー)が凄く、直接不満をぶつけるなんてこともありました。
その圧に耐え切れず辞めてしまう方が続出・・・
そうなると、指導していた側も本部から怒られるハメになってしまいます。
備品の調達にも苦労が絶えない
備品の補充や買い足し、追加で欲しいものがあるときは介護保険施設(老人ホーム)へ購入をお願いをすることになります。
アルコール消毒液の減りが早い
ラップの減りが早い
ペーパータオルを使いすぎる
小言を聞かされる中でも、必要な備品をしっかり伝えないと、経費節減で安い物が用意され、それがまたトラブルに原因になることもあります。
わざとじゃない器具の破損は大変
調理器具や機材に関しては、施設側の所有物になります。
万が一、破損してしまった場合にはまず謝罪をします。
辛いのは、さらに購入のお願いをしないといけないこと。
ある施設では、こちら(委託会社)の責任だと言って譲らず、さらに会社側も譲らずに押し問答になり、なかなか新しい調理機具は購入されませんでした。
しかし、現場では必要な調理機材だったため、やむなく管理調理師が自腹で購入したケースもあります。
老人ホームの調理師は安定してお金を稼げるが・・・・
実際に介護保険施設(老人ホーム)で働く調理師にアンケートをとってみました。
たくさんの調理師が働いている施設関係から、このような声が上がっています。
もちろん、ホワイトカラーの企業もたくさんある事は知っています。
しかし、働き方改革の訪れないブラックな委託業者もまだまだ残っている現状だと考えています。